「なかなか日当たりの良い部屋だ」
この家の2階は、南側の部屋が3面窓ガラスの部屋になっていた。
照明のスイッチには、「子供部屋」とラベルが貼ってあった。
南側は6メートル幅の道路と、庭があるので日当たりが最高だ。
そして、右側には隣の部屋まで続いているベランダがあり、反対側の腰高の窓からも日が入る。
「なかなかいい」
そんなことを思いながら、不動産会社の営業マンがいるリビングに階段を下りていった。
さて、問題はこれからだ。
キッチンのカウンターに資料を置いて、リビングを眺めながら営業マンと会話をした。
20代後半の若い男性営業マンは笑顔で感想を聞いてきた。
キッチンの壁面には、体長4センチくらいの細いクモがゆっくりと歩いているのが見えた。
そんなクモを眺めながら、僕はその営業マンに伝えた。
「なかなか状態のいい家ですね」
ただ、僕の前に内見された人が、どんな感じだったのか気になった。
「前に見に来ていた人はどんな方でしたか」
営業マンは、嫌な顔一つせずに答えた。
「たぶん、業者さんみたいでしたよ。レーザーで傾きなどを調べていました。傾きはなさそうだと言ってました。」
なるほど。
一番手に問い合わせしてきたのは、業者だったのか。
話を聞いて見ると、まだ買付は入ってないらしい。
さっきキッチンの横にいたクモが窓の方まで移動しているのを見ながら、いろいろと考えた。
「万が一、この家を買っても入居者がいなかったらどうしようか?」
僕は考えられる最大の損失を考えた。
現金で購入してるので、ローンを支払えないといったリスクはない。
ただ、固定資産税などの税金は毎年かかる。おそらく年間で2〜3万くらいだろう。
破産するレベルではない。
それに、妻の実家もここからだったら1時間もかからずに行けそうだ。
最悪、自分で住むというのもありえる。
それに、まあまあの状態の家を見送って買わなかったら、いつまでたっても賃貸業をスタートすることができない。
なにより経験が必要だ。
いろいろと悩んでる僕を、不動産会社の営業マンはぼんやりと見ていた。
「売主の方の売却目的は聞いてますか。」
まずは、売主の情報を探るようにした。
「新築の家を購入されたので、今まで住んでいた家を売りたいそうです。この近くに家を購入されまして。」
この不動産会社は新築の家を販売する会社らしく、売主はこの不動産会社から新築の家を購入したらしい。
「売主は一般の人か」
売主が一般客なら、大幅な指値(値引き交渉)ができるかもしれない。
しかし、すでに一番に内見に来ている業者がいる。
「どれくらいの価格までなら交渉できそうか。」
と、営業マンに聞いたが、そこまでは聞いてないという。
おそらく、新築の家の購入代金に使いたいから、大幅な値引きは通らないかもしれないと僕は思った。


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