「久しぶり!元気?」
僕は、エージェントから採用の連絡をもらった後、すぐに会社を出て、徒歩5分にある中華料理屋での同期会に向かった。
前々職の会社の1997年新卒入社の同期会だ。
まさか、転職の連絡をエージェントからもらった直後に前々職の同期会なんて、偶然すぎる。
参加メンバーは僕を入れて8人だった。
「カンパーイ!」
みんな、近況について話をしだした。
前々職をやめてから、8年半になるのだが、半年に1度くらいのペースでいまだに同期会が続いている。
というか、現職で働いていた時からずっと開催されているのだ。
今回の参加メンバーのうち、転職した人は僕とS君の2人だけだった。
「俺さ、2月に転職したんだよ」
とS君が言った。
僕は耳を疑った。
同じ51歳の彼が、同じようなタイミングで転職していたなんて、知らなかった。
僕はこの日、エージェントに伝えられた採用の話はしないでおこうと思っていた。
転職したことのない同期からすると、
「また転職するのか。うちの会社を辞めてから辛いんだろうな」
って思われるのではないかと心配したからだ。
S君は、そんなことはお構い無しで、参加していた同期からの質問に応えていた。
彼は、大手の通信会社のグループ会社に転職して、20年勤めたのだそうだ。
そこから、外資系のITソフトウェア会社に転職したという。
僕と同じように外資系企業へ転職したという話を聞いているうちに、僕もカミングアウトした。
「実は俺も、ついさっき、外資系の会社に転職が決まったんだ」
と僕が言うと、みんなから
「さっき?どういうこと?」
というどよめきが起こった。
実際に、エージェントから採用の連絡が来たのは、30分くらい前だった。
僕は、今回の転職の概要をみんなに伝えると
「同じタイミングで外資への転職だな。よろしく!」
そう言って、お互いの拳を突き合わせた。
もともと同じ会社の同じ支店で働いていた仲間のS君。
なにかお互いにシンクロするところがあるのかもしれない。
まわりのメンバーも、51歳の同期2人が外資系のIT企業に転職したというのを知り、よくその年齢で転職するなと思っていたに違いない。
何故なら、彼らは新卒で入社した会社に30年もいて、転職市場がどうなっているのかも知らないからだ。
もしかすると、僕ら転職組は少し変わった人間に見えていたのかもしれない。
それでも、50代の転職には興味があるみたいで、その話題で盛り上がった。
3時間の同期会があっという間に終わり、みんなとハイタッチをして別れた。
「みんなそれぞれがんばってるな!」
素直に応援する気持ちで一杯だった。
人生、正解なんてない。
たまたま新卒で同じ会社にいた仲間が、また離れていき、それぞれの道を歩んでいく。
同期会では人間ドラマが垣間見える。
僕は、転職が決まったことを、同期に打ち明けたことで、気持ちがスッキリしていた。
転職活動は孤独だ。
相談できる人も少ない。
そんな中で、気の知れた前々職の同期にオープンにできて、同じタイミングで外資へ転職した仲間までいた。
僕はほろ酔い気分で品川駅の電車のホームへ向かった。
転職活動は孤独だと思っていた。
でも、気がつけば隣で同じように戦っている仲間がいた。


コメント