「宜しくお願いします」
そう言って入ってきた瞬間、この人が面接官だとわかった。
30代くらいの男性だった。
そして、僕の目の前に座ると、自己紹介と今日の流れについて説明してくれた。
そして、僕も自己紹介をして、そこからいろいろと会話を始めた。
面接というよりも、ほんとうに会話のような感じで、とてもリラックスして話せた。
その男性は、おそらく台湾の方だと思うが、かなり日本語が流暢で、僕の話もほぼ完璧に理解されているようだった。
しかし、僕にはまだ今日のメインイベントがどうなるのか、気になって仕方がなかった。
そう、「プレゼン」だ。
事前にプレゼンの資料は送ってあるし、プライベートで使っているMacBookももってきていた。
「どんな広い会議室で、何人に向けてプレゼンするのだろう」
おそらく、40分くらいの間、話をしながら、プレゼンのことを考えていた。
話が終わり、上司の方が入ってきた。
おそらく50代後半くらいの日本人の男性だった。
「自分よりも年上の方もいるのか」
最初のリモートの面接の時には、平均年齢がかなり若い会社だと聞いていたので、自分がかなり浮いてしまう職場なのかもしれないと思いこんでいたのだ。
しかし、1人でも同年代の方がいると、少し安心感がある。
そして、早速プレゼン資料の説明をすることになった。
正直、広い会議室で、大勢の前でやると思っていた。
それが、2人に向けて17インチくらいのモニターでプレゼンをするとは思っていなかった。
僕の中では、拍子抜けしたという感情がぴったりだった。
そのおかげで、かなり落ち着いて説明することができた。
正直、プレゼンの練習の成果をすべて発揮できた満足感が自分なりにあった。
プレゼンを終え、聞いていた2人からは、様々な質問があった。
ただ、単純な質問というよりも、入社後にプレゼンした内容をどのように実現できそうかといった、ディスカッションみたいな感じだった。
僕は、過去の業界の経験から自分なりの意見を言った。
かなりいいディスカッションになったし、逆に意見を求められたことに嬉しかった。
感触としては悪くない。
ただ、まだ何とも言えない。絶対という自信には至らなかった。
プレゼンと質疑を終え、2人は退席していった。
その後、女性が部屋にパソコンを持って入ってきた。
2週間前にリモート面接で会話した女性だった。
「先日はどうもありがとうございました」
と僕は軽くお礼を言った。
そして、この日の最終試験の説明があった。
まあ、いわゆるパソコンを使った知能テストみたいなものだった。
よくある図形などの法則性を見抜く試験だ。
正直、僕は子供の頃から、この手の試験が苦手だ。
まったく正解できる気がしない。
そして、容赦なく試験が始まった。
1問目から、分からなくて焦った。
「全然わからない。終わった。。。」
心のなかでそう思った。
パソコンの画面には、終了までの時間が表示されている。
それがまた焦らせる。
「もうやばい!」
途中までは、しっかり時間をかけながら、おそらくこれだろうという選択肢を選んだ。
しかし、明らかに最後まで回答する時間がない。
「もういいや、答えを1つの選択肢に絞ろう」
そう、選択式のテストでよく使う、全部「C」という選択肢だけを選ぶ作戦だ。
5択くらいのテストだったが、僕は真ん中の選択肢だけを選び続けた。
「あ、時間がない」
結局、最後の問題までたどり着けず、2問だけ選択肢をクリックできなかった。
「このテスト、難しいですね」
思わず声に出した。
「皆さんそう言われます」
とその女性が言ってくれた。
やっぱりそうなのか。
少しは心が楽にはなったが、さっきやったプレゼンのことなど忘れて、この知能テストが上手くできなかったことだけに後悔していた。
「仕方ない、やることはやった」
僕はプレゼンの手応えと、テストの後悔を抱えたまま、その会社を後にした。


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