「正直、融資としてはほとんど出ないですね。」20代の僕が銀行で現実を知った日

不動産賃貸業戦略

「融資のご相談でお伺いしました。実はこちらのマンションの購入を考えております。」

50代後半くらいの男性バンカーが話を聞いてくれた。

融資相談窓口は、通常の窓口と違い、仕切りが設けられていて、当然ローン申込みの経験がない僕と妻は、緊張しながら話を聞いていた。

僕はカバンの中から、先日内見に行ったマンションのマイソクを取り出して、バンカーに見せて説明をした。

「正直、融資としてはほとんど出ないですね。」

僕はショックだった。

住宅ローンなどは普通に融資しているはずなのに、なぜだ?

今は、事業性ローンと住宅ローンの違いを理解しているのだが、当時はローンはローンだろうという感覚でいたのを覚えている。

「そうですか、わかりました。また何かあれば相談させていただきます。」

僕はあっさりとそう言って、妻と一緒に銀行を後にした。

具体的な想定融資金額は当然言われなかったが、ニュアンスとしたら200〜300万円くらいの雰囲気だった。

自分の貯金を含めても、物件購入価格には全然届かない。

当然、築古のマンションということも理由にあるのだろう。

みんなどうやって不動産を購入しているのだろう。僕は、根本的なところが気になっていたのだが、当時、まだ不動産投資についての書籍も少なく、どうすればいいのか分からなかった。

そうこうしているうちに、2ヶ月後に子供が生まれた。

女の子だ。

僕の頭の中は子どものことでいっぱいになり、いつしか不動産事業のことなど忘れていた。

それから2年後、第二子で男の子が生まれた。

不動産賃貸業なんてほぼ頭の中から遠ざかっていた。

「そもそも自分にはできるはずがない。それよりも家を買おう。」

その頃僕は、幕張の賃貸マンションに住んでいたのだが、転勤で東京の国立市の54平米のアパートに住んでいた。

幕張の家賃10万円のマンションよりも狭いのに、家賃が12万円。

さらに家族が増えて、子供が2人いると手狭になっていた。

僕は、だんだんと自宅を購入する方向に考えが変わってきていた。

そんな時だった。

1人の不動産営業マンが電話をしてきたのだった。

会社の中でも、不動産営業マンからの電話がかかってくる上司や同僚をみていたことがあった。

しかし、仕事中ということもあり、みんな電話で断っているのを見かけたことがあったのだが、その時僕は話を聞いてみたいと思った。

「どんなものを売りに来るのだろう」

ほぼ好奇心だった。

僕は、その週末の土曜日に、営業マンを自宅に招いて話を聞いてみた。

「先日はお電話でどうも」

営業マンは、スーツを着た50代前半くらいの細身の男性だった。

さっそく中に入ってもらい、妻と一緒にその営業マンの提案をきいた。

持ってきたパンフレットは、東京の茗荷谷の新築ワンルームマンションだった。

価格は覚えてないが、確か1,500万円くらいだったような気がする。

パンフレットを見ると、最新の設備がついていて、とてもきれいな物件だった。

妻と数年前に見に行った物件は築古マンションだったので、なんだか心がときめいた!

「これはとてもきれいですね。でも、こんな大金払えませんよ。」

僕は営業マンにそう言った。

「サラリーマンのあなたなら、ローンで融資を受けて購入できますよ。みなさんそうやって購入されています。中には、2部屋、3部屋購入されている人もいるんですよ。」

僕は即座に反応した。

「融資がでるんですか?」

正直、それならいいかもと思った。

その営業マンはカバンの中から収益シミュレーションの紙を取り出して得意げに説明した。

「短プラ5%。毎月たったの3千円払えば、このマンションが将来自分のものになりますよ」

何も知識のない僕は、毎月数千円で不動産事業をできるのならいいかも!

そう思った。今思えば、完全におめでたい男だ。

僕は新潟の出身なので、東京の茗荷谷という地名は知らなかった。

ただ、御茶ノ水大学が近くにあるので、学生の需要も多いという、それだけで安心感があった。

しかし、地震があったらどうするのかとか、万が一、入居者が見つからなかったらどうするのか不安もあった。

「大丈夫ですよ!ワンルームマンションは、小さく部屋が区切られていて壁が多いので地震には強いんですよ。」

と営業マンは言う。

「それと、このマンションならサブリース契約も可能なので安心です!」

僕はその時、サブリースという言葉すら知らなかった。

その営業マンの話によると、サブリース契約をすれば家賃の8割を毎月支払ってくれるという。

それならリスクはほぼないじゃないか。夢のような話だと、僕は思った。

1時間ほど提案を聞き、その営業マンは帰っていった。

今でも覚えているのだが、その営業マンはやたらと

「短プラ5%、短プラ5%」

と口癖のように言っていた。いまもどこかで営業をしているのだろうか。

「さて、どうしようか」

僕は妻と2人で話し合った。そして2人の結論を出した。

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