「とりあえず、ティッシュで止血だ!」
僕は、車に積んであったティッシュを血の流れる足に押さえ、緑色の養生テープでとめた。
「ふーっ」
僕は、玄関のドアの前に足を投げ出して座り、安堵した。
それからしばらく、草取りが途中のままの庭を眺めながら考えた。
そもそも、ジャングルと化した庭の草取りをするのに、半袖半ズボン、しかも靴ではなく、サンダルで作業をしていたのが間違いだった。
購入した家の庭に、どんな危険なものが落ちているか分からない。
今回みたいに、草の中に鉄の棒が立っているかもしれない。
見えないところに、ガラスの破片も落ちているかもしれない。
平らだと思っていたところに、ブロックが埋まっているかもしれない。
そういったリスクを甘く見ていなかったか。
完全に油断していた。
「はぁ〜、なんてバカなヤツなんだ」
そんなことを考えていた。
そんなとき、親子連れが家の前を歩いてきた。
「〇〇ちゃんの家だ!」
と小学校中学年くらいの男の子が叫んだ。
僕は思わずその子のお母さんに会釈をした。
「あの契約したときに会った売主の子供のお友達かな」
そのお母さんの表情も、どうして知らない人がいるのだろうという不思議な顔をしていた。
そして、気がつけばもう夕方になってきた。
「そうだ、寝る部屋の網戸だけは交換しておかないとな」
真夏ではないが、窓は少し開けて換気して寝たい。
寝る部屋の網戸はボロボロになっていた。
僕は網戸を取り外して、交換作業をした。
学生時代に住んでいた3畳1間の部屋の網戸を交換したとき以来の網の交換だ。
すでに船橋のダイソーで道具と材料を買ってきていた。
昔、交換した記憶をたどりながら作業をしてみた。
まずは、まわりについている網の留めゴムをはずして網を撤去する。
そして、新しい網を網戸の上に広げて、ローラーを使って留めゴムでとめていく。
なんとなくコツも覚えていた。
「よし!完璧!」
子供のときから、図画工作だけは通信簿の評価はAだったので、こういう作業が得意なのかもしれない。
当時、親からは国語、算数、理科、社会の5科目を頑張るように言われたものだが、図画工作が得意なのだから仕方がない。
僕は、網戸をサッシに取り付けて、左右にスライドして問題ないことを確認した。
それから、撤去した網と留めゴムをゴミ袋に入れていると、おばあさんが家の前を通った。
「こんばんは、この家に住むの?」
と声をかけてきた。
「いえ、リフォームして貸す予定なんです」
僕は答えた。
「でも、結構お金がかかるでしょう。頑張ってね」
まさか、近所の人がこんなに声をかけてくるとは思わなかった。
車で1時間くらいの僕の住んでいる家のあたりでは、近所の人が声をかけてくることなんて無い。
あるとすれば、訪問販売か宗教の勧誘くらいだ。
やはり、田舎の方は人とのつながりを大事にしているのか。
そう思いながら、ゴミ袋をまとめていた。
気がつくと、あたりは暗くなっていた。
「そろそろ夕飯でも買いに行くか」
僕は、庭の水道で手を洗って、歩いてスーパーへ向かった。


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