「へーっ、すごいですね。家賃を保証してくれるんですか」
僕は、品川の高輪口にあったルノアールで、ワンルーム不動産販売会社の営業の男性と話をしていた。
当然、その頃になるとサブリースの話も知っていたのだが、記事のライティングをするために話を聞かなければならなかった。
だから、僕は初心者を装い、家賃保証をしてくれるサブリース制度についての説明を聞き、「すごいですね」と言ってみせたのだ。
「そうなんです、空室になっても安心です。ただ、家賃の8割となりますが安心ですよ」
まあ、本当にそれが実現できればの話なのだが、その保証は無いというのは知っている。
しかし、知識がある状態で話を聞くのは、結構面白いものだ。
次から次へと説明をしてくれるのだが、それぞれの問題について自分の心の中では理解しているかだ。
「サラリーマンのあなたなら、ローンも通ると思いますし、他の方も購入されているんですよ。」
そんな営業トークが炸裂する。
僕は、どこかで聞いた営業トークだなと思った。
そうだ、若い頃に営業に来た、あの「短プラ5%」が口癖だった営業マンだ。
まさに同じ営業トークだ。
まだ同じような営業トークをしているのかと心のなかでは思いながらも、
「なるほどなるほど、それはすごいですね」
と興味津々な感じで営業トークを聞く。
これは、相手をからかっているのではない。立派なライターとしての仕事だ。
ただ、ライターであることを隠しながら、記事の依頼主の要望に答えなければならない。
そのための演技だった。
この日は、会社を早めに出て、18時半に不動産会社の営業にルノアールで会ったのだが、時刻は20時半を過ぎていた。
正直言って、よくこんなに話すことがあるなと感心した。
この会社の記事を引き受けたのはいいが、想像以上にハードだった。
今回は、ライターとしての取材の位置づけの商談だったので良かったが、これが仕事ではなくて、僕からの本当の依頼で会っていたら大変な事になっていただろう。
とりあえず、ワンルームマンションの営業マンは、引き下がって帰ってくれた。
「これほどまでに熱弁をふるいお客に契約をしてもらうインセンティブがあるのか。」
僕は、改めてワンルームマンションの販売営業の熱意を感じて、すごいと思った。


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